我々、人間の生活において最も身近に感じる昆虫が蟻ではないでしょうか?
小さな体ではありますが、大量にうごめく姿に不快感を覚える方も多いと思います…。
一見、何も考えずに密集しているように見えますが
実は、蟻には優れた社会性と統率性があるんです!
そこで今回は【蟻の社会性や行動パターン】について解説していきたいと思います。
彼らが持つ能力を知る事で蟻の生態を理解し、より興味深く感じる事になりますよ。
- 蟻の特徴とは?
- 蟻は何を食べるのか?
- 蟻の階級と統率性
- 人間との関わり
蟻の特徴について
蟻(あり)とは
ハチ目アリ上科アリ科に属する昆虫の総称。
って事は、蜂の仲間になるんですよね?
ぶっちゃけ、蟻と蜂の生態と社会性はそっくりと言えるんです。
蟻は生物学的に昆虫の一種であり、その外見には幾つかの特徴があります。
体の構造
蟻の体は頭部・胸部・腹部と3つの部分に分かれていて、それぞれが複数の節で構成されています。
他の昆虫と同じ様に、頭部には触覚があり胸部には3対6脚の足があります。
そして、蟻の体は細長い形状をしていて細い腰のクビレが特徴と言えるでしょう。
蟻の種類によって異なりますが、腰部には1つか2つの節が存在しているんです。
また、硬い外骨格を備えていて体を守ったり支えたりする役割を担っています。
色やサイズも様々
一般的に蟻は黒いイメージが強いですが、褐色であったり黄色っぽかったりする蟻も多く、外来種の中には赤い色をした蟻も存在します。
サイズも様々で多くの蟻は2~5mm程度ですが、オオクロアリなどは1cmを越える体長となり人間の爪ぐらいの大きさになるんですよ。
ぶっちゃけ、このサイズになると見た目の迫力もなかなかのモノ!
また頭部や腹部、触覚などが他の器官よりも大きく発達している種類なども存在します。
羽を持つ蟻もいる
蟻の中には羽を持つ個体も存在します。
飛行距離は数百メートルと長い距離は飛べませんが、現在の巣から離れて新たなパートナーを見つける【結婚飛行】の為に使われるんです。
見事にカップル成立となれば羽はちぎれてしまい、新たな土地で巣を作り繁殖していく事になります。
蟻の社会性と階級
アリの社会にはハッキリとした階級が設定されていて、この階級は生まれる前から決定しています。
その階級とは以下の通り。
- 女王蟻
- 働き蟻
- 兵隊蟻
- オス蟻
これらの階級には、それぞれに役割というものが決まっています。
女王蟻の役割
女王蟻は、巣の中でも中心に位置し繁殖を担当する唯一卵を産める存在です。
基本的には1つのコロニーに1匹だけですがイエヒメアリように複数の女王蟻が存在するケースもあり、その場合の繁殖力は驚異的!
外見の特徴は、蟻の群れの中で最も大きく腹部が発達していて羽を持っています。
体内にオスの精子を溜め込む事が出来るため、1度の交尾で卵を産み続ける事が可能。
種類のよっては20年以上の寿命を持ち、1日に1,000~3,000個の卵を産める体が巣の繁栄を支えているんですよね。
また、産み落とされる卵には遺伝子情報が組み込まれていて、卵の時点で蟻たちの階級はすでに決定されているんです。
働き蟻の役割
働き蟻は女王蟻に続く階級で、コロニー内において様々な役割を担っているんです。
女王蟻に比べると、体は小さく細い体をしているのが特徴。
主な役割は
- 巣の建設作業
- 子供の世話
- エサ探し
まずは大切な巣を建設する必要があります。
立派なアゴを使って土や砂を運び、家族が安心して暮らせる家造りの為に働くんでいすよね。
女王蟻は産卵に集中しているため、巣の掃除や産まれた幼虫の世話は全て働き蟻が引き受けているのが事実!
しかし、立派な家が完成しても家族が食べていけなければ滅んでしまいますよね?
このため、巣を離れて子供たちが食べるエサを探しに探索を開始。
美味しいエサを見つけたら、フェロモンの使って仲間に場所や経路を伝達しておく事で子供たちは食料に困る事は無いんです。
以上の事から
働き蟻がいなければ、蟻の巣は存続できないほど重要な存在と言えるでしょう。
兵隊蟻の役割
兵隊蟻は名前が示す通り、巣を敵から守るために戦ったり敵の蟻を侵略するために戦う蟻たちの事。
と思うかもしれませんが、実際は他にも役割が多いんです。
見た目の特徴として、他の蟻よりも大きな体と強靭なアゴを持っている事。
働き蟻たちが手に負えないような大物を運んだり、分厚い葉を切り取ったりするのが本来の役目なんです。
普段は巣の中で暮らす事が多く、『いざ!』って場面で登場する縁の下の力持ち的な存在と言えるでしょう。
しかし
蟻の中でも特に凶暴な【グンタイアリ】だけは別!
グンタイアリは働き蟻の中でも4つの階級に分けられいて、それぞれに役割があり忠実に任務を遂行します。
激しい狩りを行うグンタイアリは、軍行中に出会った獲物が大型哺乳類(人間も含む)でさえも集団で襲いかかるんです!
本当の兵隊蟻とは、グンタイアリの事を指すんですよね…。
主に熱帯地域に生息していますが、日本国内でも【沖縄】・【西表島】にはグンタイアリの1種である【ヒメサスライアリ】が生息しています。
この地域に住んでいる方は注意が必要!
オス蟻の役割
オス蟻は特殊な存在であり、巣を繁栄させていくためには必要不可欠な存在です。
オス蟻は作り始めたばかりの巣に産まれる訳では無く、巣が大きくなって繁殖期を迎えると産まれてくるんですよね。
その役割は、他の巣で生まれた女王蟻と交尾をする事。
ってか、交尾以外の仕事は一切しないんです!
見た目は他の蟻よりも小さくて弱々しいんですが、女王蟻と同じ様に羽を持ち飛ぶ事が可能。
産まれたオス蟻は、羽を使って他の巣にいる女王蟻を求めて【結婚飛行】として飛び立ちます。
めでたくカップルが成立すれば即座に交尾を開始し、新たな命を生み出し幸せな家庭を築く事が出来るんですよね。
なんともロマンチックな話ですが、現実の蟻社会は厳しいものです…。
実は、ほとんどのオス蟻は女王蟻と出会う事が無く寿命を迎えます。
しかも
めでたく出会えても、オス蟻は1度交尾すると死んでしまうんです!
一生に一度の交尾のために全力で生きる…。
そんなオス蟻は、特殊な存在であり巣を繁栄させていくためには必要不可欠な存在なんですよね。
蟻は何を食べているのか
蟻は『甘いモノに集まる』ってイメージの方が多いと思いますが、実は食性も様々なんです。
主な食性は
- 吸蜜性
- 雑食性
- 菌食性
植物の樹液や果実を好む蟻もいれば、昆虫や動物を好む種類もあります。
中でも珍しいのは、キノコなどの菌類を食べる種類でしょう。
吸蜜性の蟻の特徴
吸蜜性の蟻は、主に花粉や蜜を集めてエサとして食べています。
非常に優れた嗅覚を持っていて、効率的にたどり着く事が可能。
植物だけでなく、人間のお菓子やアブラムシなどが分泌する甘露という甘い蜜も大好きなんですよ。
特徴として
痩せ型で体が透き通っているように見えるタイプが多く、長い足と触覚を持っている事が挙げられます。
主な吸蜜性の蟻は
- アミメアリ
- トビイロケアリ
雑食性の蟻の特徴
雑食性の蟻は、甘いモノはもちろん昆虫や動物でさえ何でもエサにします。
誰もが、死んだ昆虫を蟻が運んでいる姿を見たことがあるのではないでしょうか?
生きている生物が相手でも、集団で群れになって襲いかかり分解して巣に持ち帰る獰猛な種類も存在するんですよ。
このためほとんど食べ物に困る事はなく、どんな環境でも生き抜いていく事が出来るでしょう。
特徴として
体と顎が大きく発達し、動きも素早い事が挙げられます。
室内に侵入してくる蟻は、雑食性の蟻が多いのも特徴と言えるでしょう。
主な雑食性の蟻は
- オオズアリ
- イエヒメアリ
- ルリアリ
私の知人もルリアリが2階の部屋に侵入して来ました!
菌類を食べる蟻
菌食性の蟻は、主にキノコの根に生息する菌糸をエサにしています。
特定の菌類と共生関係にあり、巣の中で食べやすいように育てる事もあり【蟻とキノコの農場】と呼ばれたりもしているんです。
体の特徴として
丸く太っていて、顎が小さい事が挙げられます。
硬いものを噛まない事から、顎の筋肉が劣化しているんですよね。
一部の菌食性の蟻は、体内に菌を運ぶための特殊な器官を持つ蟻も存在します。
主な菌食性の蟻は
- ハキリアリ
蟻がエサを探す方法
蟻はエサを探すために様々な方法を使います。
その方法は
- 触覚:感覚で探す
- 視覚:目で探す
- 嗅覚:臭いで探す
始めに行う行動が【ランダムウォーク】です。
ランダムウォークとは
まず蟻たちは、巣の周りをランダムに歩き回ってエサを探していきます。
その行動半径は100mにも及び、時間はかかりますがエサの場所を特定するためには有効な方法です。
この時、太陽の位置から巣の距離や方向を記憶しているんですよね。
そしてエサの臭いを触覚で感じ取り、徐々に近づいていきます。
最後に目を使ってエサであることを確認します。
餌を見つけたら
エサを発見した蟻は、周囲にフェロモンと呼ばれる化学物質を分泌しながら巣に戻ります。
このフェロモンは、仲間に
ここにエサがあるよ!
という情報を伝えるために使われ、臭いをたよりに他の蟻たちも餌場へとむかうことになります。
そしてエサにたどり着いた他の蟻たちもフェロモンを出す事で
臭いがどんどん強くなっていき、多くの蟻が集結してくるんです!
こうして、大きな獲物でもみんなで力を合わせて巣に持ち帰ることが可能になるって事。
蟻のコミュニケーション方法
あまり視力が良くない蟻はフェロモンと触覚を使ってコミュニケーションをとり、効率的に情報を交換して強い集団を形成しています。
触覚は非常に敏感で、触れた物質の化学的特徴をも感知する能力が備わっているんですよ。
フェロモンの役割
先述した通り、エサを発見した時に他の蟻に教えるためにフェロモンを使います。
つまり道案内って事で、エサの場所以外に新しい巣の場所などを教える事にも役立つんです。
それ以外に敵と味方の判別にも使用され、敵の存在を感知するとフェロモンを出して仲間の蟻に警告を発する時にも使われます。
触覚の役割
仲間が分泌したフェロモンを感じ取る期間が触覚です。
蟻同士が頭を『コツン』とぶつけているシーンを見たことはありませんか?
こうする事で、相手の状態を感じ取り危険性の判断などのコミュニケーションをとっているんです。
触覚は非常に重要な器官で、片方が無くなったり結んだりすると感知能力が著しく低下する事も分かっています。
さらに、蟻の触覚は他の昆虫とは違って特徴的で
柄節(へいせつ)で『くの字』に曲がっています。
その理由は、狭いトンネル生活が中心の蟻にとって折りたたみやすい形が最適だからなんです。
蟻の巣の構造
蟻が生活していく上で欠かせないのが巣。
種類によって規模は違いますが、多くの蟻に共通する構造は以下のような特徴があります。
- 深い地下
- 多数の部屋
- 複雑なトンネル
- 見張りの存在
順に解説していきましょう。
深い地下に巣穴を掘る
規模の大きな巣になると、生活する蟻の数は数百万匹にまで達します。
このため入り口は小さくても、その下には地中を掘り進んで深い所まで広げる必要があるんです。
最大規模の巣になると、巣の深さは地中8mにまで到達していたケースも!!
多数の部屋を持つ
蟻の巣は、地中の中に複数の部屋で構成されています。
その部屋は
- 女王蟻の部屋
- 卵を産む部屋
- 繁殖するための部屋
- 食料を保存する部屋
それ以外にも多くの部屋が存在し、蟻の種類によっては数百~数万の部屋を持つ事もあるんです。
全ては、蟻の社会性による統制がとれた結果といえるでしょう。
複雑なトンネル構造
蟻の巣は、複雑なトンネル構造を持っています。
縦に繋がるが通路となり、そこから横に繋がるトンネルを作り部屋へと通じるんです。
このトンネルは、食料の運搬や他の部屋との連絡に使われるだけでなく
土壌の空気や水を循環させる役割も果たしているんです。
ちなみに入り口は複数存在し、付近に固まっていいる蟻の巣が地中で繋がっているケースも多いんです。
入口には見張りを立てる
自然界には天敵というものが存在します。
蟻も例外ではなく外敵に襲われる可能性があるため、蟻の巣の入り口付近には見張り役の警備員を配置しています。
働き蟻の一部が交代で任務につき、異常を感じたら警戒フェロモンを発して仲間に知らせる事で巣を守っているんですよね。
もしも外敵が侵入したら蟻同士の戦いが勃発する事になります。
雨が降ったらどうするのか
実は蟻の巣は、雨が降っても内部が水浸しにならないように計算されて設計されているんです。
まず蟻は巣を作る際、ランダムに選ぶのではなく水はけの良い場所を選んで巣を作ります。
さらに蟻の巣の入り口は、微妙に上向きになっている事が多いため雨水が侵入しにくい構造をしており、浸水した雨水を地下深くへと導くような排水システムの様に機能するんです!
それでも、大量の水が流れ込んでくるとどうするか?
蟻たちは水を運び出すために働き、他の蟻は卵や幼虫を安全な場所へ運ぶ行動をとるんです。
また一部の蟻は、連なる事で【蟻の橋】を作り水たまりを渡って安全な場所へ避難する事もあるんですよ。
つまり
蟻の巣は雨や洪水に対しても驚くべき適応力と協調性を発揮して、巣の維持と仲間の生存に全力を尽くすんです!
シロアリとの違い
シロアリは生物学的に分類すると、【ゴキブリ目シロアリ下目】。
つまりハチ目の蟻とは違い、シロアリはゴキブリの仲間!
このため、よく観察してみると様々な違いがあるんですよ。
体の違い
決定的な違いは体の色。
シロアリの体は名前の通り白色や淡黄色をしています。
先ほども説明した通り、蟻には様々な色をした種類も存在しますが白い色をした蟻は存在しません。
それ以外の違いは
蟻 | シロアリ | |
腹 | くびれがある | 寸胴 |
触覚 | 長くて「く」の字 | 短く数珠状 |
はね | 前の2枚が長い | 4枚とも同じ大きさ |
食性の違い
シロアリは細胞壁を分解する特殊な酵素を持っており、木材に含まれる【セルロース】を食べる事ができます。
このため、家屋や森林に大きな被害を与える可能性があるのがシロアリなんです。
特に家屋に浸入された場合、建物の強度が低下し災害時に倒壊してしまう深刻な被害をもたらす恐れがあります。
蟻の中にも木材に巣を作る種類も存在しますが、食べる事はないため被害も少ないと言えるでしょう。
シロアリについては、以下のシロアリの生態で解説しています↓↓↓
人間の生活にどんな与える影響
蟻は地球上で成功した昆虫の一種で、私たち人間社会にも様々な影響を与えているんですよね。
良い影響
蟻が与える良い影響とは、主に
- 土壌の改良
- 害虫の駆除
- 植物の繁栄
蟻の多くは地中に巣を作る事で、土の中に酸素や水分が循環しやすくなります。
また雑食性の蟻は、農業被害を及ぼすアブラムシやテントウムシの幼虫などの害虫をエサとして捕食してくれるんですよね。
こういった食べ物や廃棄物は、やがて土にかえり栄養素としての役割も果たしてくれます。
それ以外の吸蜜性の蟻は、植物の種子を運び貯蔵する事もあるんですよね。
これは植物の種子を散布する一形態であり、植物が新たな場所で成長する手助けをする効果が期待できるんです。
悪い影響
一方で、蟻が与える悪影響もあるのは事実…。
その原因は
- 蟻自体が害虫となる
- 生態系を乱す
吸蜜性の蟻の中にはアブラムシと共存関係にある種類も存在し、農作物に被害を与える危険性があります。
また雑食性の蟻の中には、食べ物を求めて家屋に浸入してくる蟻も。
食べ物の被害だけならマシですが、噛まれたり刺されたりする被害がでる危険性もあるんです。
そして最近は外来種である【アルゼンチンアリ】や【ヒアリ】が各地で発見され、彼らにより在来種が侵略される恐れも懸念されているんですよね。
しかも蟻の巣は規模が大きく数が多いため、自分で駆除を行うのが非常に困難といえるでしょう。
そんな時は害虫駆除のプロに依頼する事が確実です。
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